2019年09月07日

神峰晴明

立山山頂の三峰の内、中央の最高峰「大汝山(おおなんじやま。3015m)」と右側(南)の雄山(3003m)の間を巻く、岩が散らばる登山路と、その傍にある尖った大岩

寝不足での立山登山開始

今日は予告した、富山の高峰・立山での登山及び野営の日。

夜中に車輌にて麓に入り、仮眠して早朝から行動することとなった。しかし、駐車場での頻繁な車輌の出入りや、同行者のいびきの問題等もあり、結局一睡も出来なかった。

富士山やチベットでは高山病になる可能性が高い危険な状況である。幸い、立山の標高ではその可能性はないと思われたが、体調的にかなり辛いものとなった。

とはいえ、決めたこと、始めたことなので、進むしかない。週末開催とはいえ、遠方であることや、新学期が始まったこともあり、引率役として人数が少なくなったのも幸いであった。


上掲写真 立山山頂の三峰の内、中央の最高峰・大汝山(おおなんじやま。3015m)と右側(南)の雄山(おやま。3003m)の間を巻く、岩が散らばる登山路と、その傍にある尖った大岩。存在感があり、かつ形も良いので名が付けられていると思うが、判明しなかった。「へそ出し」作業後の手打蕎麦の生地に似ているが、存知の人があれば、是非ご教示を……。


日の出直前の立山駅周辺。奥の線路が富山地方鉄道立山線、手前の線路が同線の引込線
日の出直前の立山駅周辺。奥の線路が富山地方鉄道立山線、手前の線路が同電鉄の引込線である。麓とはいえ、標高は500mに近い。それ故、相当な勾配に線路が敷設されていることが判る。しかし、予想に反して今朝の気温は高めで、暑くもなく涼しくもない、少々稀な朝となった


立山ケーブルの立山駅改札前で始発を待つ人々
立山ケーブルの立山駅改札前で始発を待つ人々。空いているように見えるが、階下の券売所前は暗い内から長蛇列が出来ていた。幸い我々は予約していたので、並ぶことなく始発車への乗車が叶った


立山高原バスの車窓から見た、ブナ平にある立山杉の巨木「仙洞杉」
立山高原バスの車窓から見た、ブナ平にある立山杉の巨木「仙洞杉」

ケーブルカーで標高差500m程を一気に登り、溶岩台地の上面に出る。その後は立山高原バスに乗り換え、更に上方へと向かった。始点の美女平から上ノ小平までの台地上は杉やブナが生い繁り濃密な原生林を成している。

写真はこの地方の特産とされる立山杉のなかでも一際大きな「仙洞杉」。ブナ平付近の道際にあり、車窓から観察できた。幹回り9.4m、樹高21mの巨木で、車内放送によると、その樹齢は1000年、或いは1500年という。

実は、この経路を含む「立山アルペンルート」は、昔信州側から通行したことがあるので、初見ではないが感慨深いものがあった。以前にも感じたが、一度ゆっくりこの森を散策してみたいと思った。

そこには、仙洞杉よりまだ大きな杉もあるらしい。


立山高原バスの車窓から見た、七曲付近の高原と彼方の富山平野や能登の山々
同じく立山高原バスの車窓から見た、落差日本一を誇る称名滝。立山主峰直下の水を集め、溶岩台地上から一気に350m下に落とす。鋭く巨大な台地の切れ目と共に、国内他所には在り難い、壮大な景観を見せる


立山高原バスの車窓から見た、弥陀ヶ原

称名滝を越え更にバスが高度を稼ぐと、樹々が減り、辺りの眺望が開けた。写真は、下方彼方に見える立山平野(中央奥)や能登の山々(右奥)


立山高原バスの車窓から見た、溶岩高原で高層湿地の「弥陀ヶ原」
立山高原バスの車窓から見た、溶岩高原・高層湿地「弥陀ヶ原」。通過後に上方のつづら道より撮影。車道がなかった頃の登拝者は、急登の岩場や深い森等と共に、こうした湿原の通過にも苦労したことであろう


立山高原バスの車窓から見た、天狗平付近に現れた朝日の下に四角い頭を持つ立山
やがて、朝日の下に四角い頭を持つ立山が見えてきた。場所は天狗平辺り、標高は2000mを超えている。本来なら簡単には来られぬ、ただならぬ場所である


天狗平付近を登坂する立山高原バスの車窓から見た、ソーメン滝
同じく天狗平付近を登坂する高原バスの車窓から見た、ソーメン滝。ここも、溶岩台地を断ち割ったかのような壮大な景観を見せる


天狗平付近を登坂する立山高原バスの車窓から見た剱岳
そして左手(北側)には、多くの登山者が憧れる岩峰「剱岳(2999m)」も現れた


室堂ターミナル裏手にある水場「玉殿の湧水」と背後に聳える立山

美味の天然水汲み登頂路へ

美女平駅から約50分のバス行を経て、山頂直下の室堂平に到着。ターミナルの標高は2450m。黒部ダム方面へ下るトンネル・トロリーバスの始点のため、日本最高所にある「駅」とされる。

ここのコインロッカーに野営道具を預け、身軽となって山頂を目指すこととした。本来は山頂を縦走して野営地に下るのが効率がよいが、同行者の体力と体調を考慮し、山頂往復式とした。

写真は室堂ターミナル裏手にある水場「玉殿の湧水」。日本百名水の一つでお世辞抜きに抜群の美味さを誇る。そしてその背後には立山が聳える。

丁度ここが立山登頂路の始点に当たるため、登山者は水を補給していく。我々もまた然りで、実に有難い限り。また、天気が快晴なのも有難かったが、異様なほど気温が高く、暑さでの苦労も案じられた。


立山左下(南側)の鞍部「一ノ越」へ向かう登山路の途中に返りみた室堂方面
立山の左(南)直下にある鞍部「一ノ越」へ向かう途中の登山路から返り見た室堂方面。森林限界を超えた高山特有の光景が広がる


一ノ越鞍部の手前の登山路脇に現れた「祓堂(はらいどう)」
一ノ越鞍部の手前に現れた「祓堂(はらいどう)」。山上神域と下界を区切る一種の結界表示で、嘗て登拝者はこの付近で禊(みそぎ。水浴での清め)を行い、白装束に着替えて山頂を目指したという


立山南側の尾根上の登山路から見た、一ノ越鞍部や一ノ越山荘。

そして一先ず「一ノ越」着。多くの人がするように、我々もここで小休止した。写真は登山路を少し進んだ立山南尾根から見た鞍部や一ノ越山荘。


立山南横の鞍部「一ノ越」から見えた北アルプス表銀座の秀峰「燕岳(つばくろだけ。2763m)」や「大天井岳(おてんしょうだけ。2922m)」

一ノ越の標高は2705mあり、かの北陸の高峰「白山(2702m)」より高い。よって、晴天と相俟って周囲の山々が存分に見渡せた。

写真は、そこから望めた北アルプス表銀座の秀峰「燕岳(つばくろだけ。2763m)」。中央奥にある鋸刃状の峰で、即ち告知写真の対面から見たものである。右奥の高い頂は「大天井岳(おてんしょうだけ。2922m)」


一ノ越から見上げた立山山頂へ続く稜線と、そこに取りつく多くの登山者
一ノ越から見上げた立山山頂への稜線と、そこに取りつく登山者。下部の建屋は一ノ越の公共トイレ(1回100円)


一ノ越から立山山頂へ続く尾根道から見えた、一ノ越に接近する富山県の赤いヘリコプター

ここからは、いよいよ岩の多い本格的な急登となるので、暑いが革手袋を着け進む。寝不足の身に強い日射の暑さがこたえたが、急登自体は一定的に進めるため苦にはならなかった。一本道で人も多く、迷うこともないため、同行者より先に、一気に山頂まで進ませてもらった。

とはいえ、途中登山者の渋滞があり、素早くとはいかなかったが……。上下の道が分けられているにもかかわらずこの状況なので、連休や盆等の混雑期はさぞや混み合うことかと思われた。

写真は、その途中、下方に現れた富山県のヘリコプター。赤いので防災ヘリかと思われたが、2度程一ノ越への接近を試みて、程なく爆音を響かせ去っていった。小屋で急病人でも発生したのであろうか。


立山山上の一等三角点付近で寛ぐ登山者

絶景雄山山上
地元民も驚く好眺望


そして三峰が並ぶ頂上稜線に到着。一ノ越との高低差は約300m、時間にして30分程であったが、渋滞がなければもっと早くに着いたと思われた。

写真は山上の一等三角点付近で登頂を喜び、寛ぐ登山者。但し、ここは立山山上の南端で、標高は2991mと、まだ本邦稀な3000mに達していない。


立山三峰の一つで、雄山神社の祠(峰本社)が立つ雄山山頂
3000mを超えるのは、三角点から少し進んだここである。即ち雄山山上であった。雄山は山上の縦走路から孤立しており、頂には祠(峰本社)が建てられ、鳥居と番所で入域が制限される聖地となっている。富士・白山と並ぶ日本三霊山の一つとして古代から尊崇されたため、当然の状況か

ただ、参拝者はほぼ登山者で占められており、時折、その行動を注意する声がスピーカーで流された。拝観料はお祓い・御札付で500円。我々も聖地到達を記念して拝観することとした。


立山雄山山頂の雄山神社「峰本社」と神職や参拝者
立山雄山山頂の雄山神社「峰本社」と神職や参拝者

参拝と祈祷は頂上が狭いため20人程毎に分けられて行われた。祈祷はお祓いを伴い、ちゃんと登山の安全を願う内容で行われ、最後には全員にお神酒も振舞われた。御札もザック(リック)に付ける鈴付と1枚物の2枚くれ、更に写真入りの入場券までもらえたので、満足度は高かった。

事前に注意されていた、危険な石段での撮影や、その他身勝手な行動などで、強く叱られる者も出たが、仕方あるまいし、むしろ昨今稀な、そうした管理側の毅然的態度に感心させられた。


立山の雄山山頂付近から見た、彼方の富士山頂(中央奥)

さて、立山山上で気になったのは、何と言ってもそこからの眺望。立山がある北アルプス北部では、ここより高い山が無いため、360度の眺望が得られた。更に、地元民や常連さんが口を揃えて絶賛する好天でもあった。

故に写真の如く、遠方遥か富士山頂まで見えた(中央奥の雲の上)。


立山の雄山山頂付近から見た、眼下の室堂平やその向こうの富山湾や能登半島
立山の雄山山頂付近から見た、眼下の室堂平と彼方の富山湾や対岸の能登


立山雄山山頂の雄山神社・峰本社にある「雄山頂上」の石碑と登拝者が持ち込んだ玉石、そして対面に聳える立山最高峰の「大汝山」
立山雄山山頂の雄山神社(峰本社)敷地端にある「雄山頂上」の石碑と登拝者が持ち込んだ玉石、そして背後に聳える立山最高峰「大汝山」

立山最高所「大汝山」へ

ところで、雄山山頂からは写真の如く隣に岩峰が見えたが、それが今日の山上最終目的地・大汝山だったので向かうことにした。


立山の雄山山頂から、その最高峰の大汝山まで続く巻道登山道
立山の雄山山頂から、その最高峰たる大汝山まで続く、稜線横の巻道登山道。中央上部に冒頭画像で紹介した尖った岩が見える


立山大汝山の山頂に集い、記念撮影に興じる登山者

そして、間もなく大汝山頂に到着。写真はそこから少し離れて撮ったもの。風化した岩峰に多くの登山者が集っている。山頂標識と共に記念撮影をしているのである。

危うい場所に思われるかもしれないが、少し足場が悪いくらいで、特に危険な場所ではなかった。


大汝山山頂から見た黒部ダム(黒部峡谷奥地)
同じく大汝山山頂から見た黒部ダム。即ち黒部峡谷である。右下の残雪は日本では数少ない現存氷河(御前沢雪渓)であろうか


大汝山山頂から見た、正に「岩の殿堂」の姿を見せる剱岳
同じく大汝山山頂から見た剱岳。正に「岩の殿堂」。いつか登ってみたい


立山の大汝山山頂から北方に見えた、白馬岳(2932m。中央奥)
こちらは大汝山山頂から北方に見えた、白馬岳(2932m。中央奥)


立山大汝山山頂から見た、奥黒部の連山向こうに屹立する槍ヶ岳(中央奥の尖った峰)
そして、剱岳と並んで人気のある北アルプスの名峰「槍ヶ岳(3180m)」も、くっきりはっきり見えた(中央奥の尖った峰)


立山大汝山山頂で頂いた、同行氏持参のクリスタルアイス入りアイスコーヒー

大汝山では昼食休憩をとったが、寝不足の影響で食欲がわかず、調理器具を使うことはなかった。代わりに、同行氏が持参して現地で焼いた本格ソーセージ等を食した。

写真は同じく同行氏が持参したクリスタルアイス入りのアイスコーヒー。上等のものらしく、大変な美味で、感謝と共にここまで重い氷や食材を運んだことに感心するが、これが、のちの予定変更の遠因となる……。


立山大汝山山頂から見えた剱岳(左奥)と富士ノ折立(右手前)
立山大汝山山頂から見えた剱岳(左奥)と富士ノ折立(右手前)

大汝山での食事後、少々昼寝しようかと思ったが、異様な暑さのため叶わなかった。特に陽射しが強烈で、京都で高まった熱中症気味の体調が(前日も無空調で仕事に挑む)、倍加された感じとなったのである。

これはマズい、期待していた1万尺上空の避暑も台なしである(実はこの日、富山は7年振りに9月の猛暑日に見舞われた)。仕方なく、ある程度休んでから元来た道を戻ることにしたが、写真の如く、北方すぐそばに富士ノ折立(2999m)の頂が見えていた。

ちょうど漢字の「山」のような形の立山三峰の左端にあたる峰で、折角なので、同行氏が雄山まで進む間に独りで行ってくることにした。


立山山上の尾根道を阻むように屹立する富士ノ折立山頂
立山山上の尾根道を阻むように屹立する富士ノ折立山頂

人気ない三峰左端の富士ノ折立

富士ノ折立には5分もかからず到着。写真では鋭く危険な峰に見えるが、左側を巻き登るルートがあり、難なく登頂出来た。

日帰りの人は殆ど雄山か大汝山で引き返し、また縦走する人も先を急ぎ下方の巻道を進むので、登る人が極めて少ない峰であった。


富士ノ折立頂部の標識
富士ノ折立頂部の標識


富士ノ折立山頂から見た、室堂を含む立山西直下の谷地全景

富士ノ折立に来て良かったことは、室堂を含む立山西直下の谷地が最も良く観察出来たこと。写真がその様子で、個人的に素晴らしく感じられた。

勿論、人が少なく静かな様も、本来の高山らしくて、悪くはない。


富士ノ折立山頂から見えた、今晩泊まる予定の雷鳥沢野営場(中央の平地)や噴気上る地獄谷(左上)
富士ノ折立山頂から見えた、今夜の宿泊地・雷鳥沢野営場(中央の平地)や噴気上る地獄谷(左上)。好天は暫く続きそうで、夜空の星やご来光が楽しみに思われた


立山室堂にある、日本最古の山小屋で重要文化財の室堂小屋
室堂への下山時に立ち寄った室堂小屋。300年近く前に立山参詣者の為に建てられたという、日本最古の山小屋で、重要文化財に指定されている。内部には小屋や立山信仰に関する展示もあった

室堂帰着、さて野営は……

富士ノ折立から雄山まで15分程で戻り下山を開始した。そして一ノ越を経て室堂ターミナルに帰着。しかし、ロッカーに預けた野営道具を回収し、荷を整理して野営場に向かおうとした時、同行氏が足の不調を訴えた。

元々不調の膝が限界に達したらしく、重荷を担いでの下降200m、歩行1時間は無理という。先に駐車場に降りて翌日まで待つとも言われたが、分散するのも良くないため、私共々最終バスで立山駅に下ることにした。

残念だが、致し方あるまい。ただ、同行氏初の3000m超の登頂は叶ったし、私も三霊峰完登が叶った(昔来た時は室堂散策止まり)。今回はこれで良しとするしかあるまい。

不調の一因には、山頂のアイスコーヒーで触れた通り、食関連の荷を持ち過ぎたことがあるが、事前に説明した上での希望だったので仕方あるまい。むしろ、苦労を承知で楽しみや我流を追求する姿勢は応援すべきことであり、これを教訓として、是非また挑戦を続けて欲しいと思う。

さて、行きと同じく、高原バスとケーブルカーで長大な溶岩台地を下り、駐車場を経て、立山を後にした。途中、石川の市営温泉に寄ったり食事をするなどして無事京都に戻ったのは、既に夜も遅い時間であった。

皆さん、お疲れ様でした。高地野営はまた機会あれば!

posted by 藤氏 晴嵐 (Seiran Touji) at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 山会